園だよりを通じた附属森のこども園との連携:6月のコラム紹介

幼児教育専攻の教員が、リレー方式で担当している附属森のこども園の園だより6月号のコラムを紹介させていただきます。
6月号は、現在、サバティカル研修(スウェーデン)中の西浦和樹先生のコラムです。

働き方を見直すということ ― ストックホルムからのヒント

今年度は、大学からサバティカル研修期間をいただき、ストックホルムからお伝えします。
15 年前に滞在した思い出のスウェーデンは、あいかわらず穏やかで、美しい自然とともに人々の暮らしが息づいていました。けれども、働き方や家族との過ごし方には、以前よりもさらに大きな変化を感じました。

かつてのスウェーデン滞在のときに感じたことは、すでに「仕事より家族」「効率よりも心の余裕」という価値観は根づいていた印象がありましたが、今回の訪問では、それがより一層進んでいるように思えました。たとえば、多くの人が夕方といっても、 15 時過ぎから仕事を切り上げ、週末は家族と静かに過ごす。時間外に仕事のメールが送られてくることはまずありません。自宅から対応できることをわざわざ出社したり、長時間働いたりすることはほとんどありません。ワークとライフの境界がきちんと保たれ、それぞれの時間が大切にされているのです。

「働くこと」と「暮らすこと」が無理なく共存し、家族と過ごす時間が“特別なイベント”ではなく“日常の一部”、すなわち習慣化され、根づいているのです。

日本ではまだ、「仕事が終わってから」「週末だけ」子どもと向き合うというスタイルが当たり前かもしれません。でも、ストックホルムの人々のように、家庭の時間を“先に確保する”働き方が、子どもにとっても、大人にとっても、より豊かな日々につながるように思います。

もちろん、国や制度の違いもありますから、すぐに同じようにはいかないかもしれません。でも、たとえば「今日は少し早く帰ってみよう」「週末はスマホを置いて一緒に散歩に行こう」そんな小さな種を育てれば、子どもとの関係は少しずつ変わっていくはずです。

大人がゆったりと心に余白をもち始めると、子どもも安心して自分を伸ばしていける――ストックホルムの暮らしは、そんな当たり前だけど忘れがちなことを、あらためて思い出させてくれました。

宮城学院女子大学教授/ストックホルム商科大学客員教授 西浦 和樹

ストックホルム写真