「スリー・コインズ・ツアー」に行ってきました

人間文化学科の教職員と学生で構成される人間文化学会では、年に一度、日帰りの研修旅行「スリー・コインズ・ツアー」を実施しています。このツアーは、わずか300円という格安の料金で、人生において貴重な学びの旅行へと出かけることができます。
今年は、杉井先生、八木先生、副手の大友さん、17人の学生が参加しました。11月23日(水)の祝日、8:40大学に集合し、大型バスに乗って旅へと出発しました。
 
今回、最初に訪れたのは、宮城県南三陸町にある「南三陸311メモリアル」です。
「もし自分だったらどう行動するか」「自然とは、人間とは、生きるとは」この施設のミッションは「自然災害から命を守るために大切なことは何かを問い続けること」です。私たちの想像を遥かに超えてきた20m以上の高さの津波が、美しく、穏やかな南三陸という街を襲ったのは2011年3月11日です。いつも通りの変わらない、「行ってきます」の挨拶をした1日のスタートから、夕方にはあのような悲劇になるとは誰も予想をしなかったはずです。「ただいま」と家族に伝えられなかった人々が大勢いました。
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この施設の近くには、よく私たちがテレビ等で目にする3階建ての高さ12mの防災対策庁舎があります。これは防災訓練などでよく使われており、町の職員も住民も「ここに逃げれば安全だ」と理解していた場所です。しかし、多くの人は津波に流されてしまったそうです。すぐ下を見ると津波の中には「助けて!」と叫んでいる人、既に亡くなっている人が見えていました。そのとき、「津波に飛び込んで死ぬことができたらどんなに楽か」という感情を抱いた人は少なくなかったようです。
波の中にいる人を助けようとして飛び込んだ人がいます。人助けのために自分の命を落とした人も数多くいました。この事実を耳にした時、もし自分だったらどう行動するかという問いを投げかけられました。私だったら、その光景を理解することができず、唖然とするだけになってしまうのかもしれません。ある消防士さんが「自分も相手も共に助かることが大切です」と話しました。例えば心肺蘇生を1度しか行ったことがない人でも、1度の経験があれば自信を持って動くことができることを学びました。震災前に南三陸の中学校では心肺蘇生法を習う授業があり、震災発生時には、生徒たちが1人でも多くの人を助けようと心肺蘇生を行いました。
この施設を訪れると、様々な問いが投げかけられることによって、自然と頭の中で考え、当時の様子、人々の心情を感じ取ることができます。私たちが今できることは、当時の様子を理解し、「自分事」にすることです。また、安全だと思う場所がすべての災害に対応できるのかどうか、今一度、自分の街の特徴を理解すると共に、再確認をすることが大切だと考えます。
私は将来、教員を目指しています。私が教える生徒は東日本大震災を知らない子どもたちです。その子ども達に訪れて欲しい場所のひとつになりました。津波を体験した人々の記憶を無駄にしないため、後世に伝えるために、災害についての意識を一人一人が持たなければいけないということを再確認するべきだと考えさせられました。

次に訪れたのは、岩手県一関市にある「大籠キリシタン資料館」と「殉教公園」です。11月5日(土)に、人間文化学科主催の「東北・宮城の潜伏キリシタン」のシンポジウムがあり、資料館の方がお2人、講演にきてくださいました。
この施設に着くと1番に目を引くのは300段の階段です。私たちはこの階段を登りましたが、足が上がらず、いつまで経っても頂上につかないこの階段にはどのような意味が込められているのだろうと疑問に思いました。あとで、その答えがわかりました。キリストが十字架にかけられて、長い時間、苦しみの中で亡くなっていたことを追体験するという意味をもっていました。
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江戸時代の初め、300人を超すキリシタンがこの地にいたようです。キリシタンが禁止された後は、この地でも、キリストの像を描いた踏み絵を踏めない人々が目の前で首を切られるという拷問だけでなく、その光景を目にしなければいけない苦難という、ふたつの過酷な状況がありました。資料館には、潜伏キリシタンの歴史を伝える品々がたくさん展示されています。そこでは、どんなに辛い迫害があろうと、信仰の道を守り抜いた先人の歴史が、将来にわたって語り継がれています。

最後に、私たちは宮城県栗原市にある「くりでんミュージアム」を訪れました。2007年に廃線となった田園鉄道の車庫に、晩年、活躍していた実物車両2台が展示されています。車庫では、当時の現役さながらの雰囲気を味わうことができました。入館券が硬券切符のモチーフになっており、とても可愛らしかったです。すべてが営業当時の状態で保存されており、現代を生きる私たちは見るもの全てに魅了され、まるで憧れの昭和の世界に飛び込んだようで、電車にワクワクする子どもの気持ちになって見学をしました。大学に戻ってきたのは、真っ暗になった夕方の6時でした。
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スリー・コインズ・ツアーという、300円という金額で、本当に旅をしたのかと思うほど、この先の人生においてかけがえのない学び、貴重な体験をすることができました。また、このツアーが開催されたら迷うことなく参加したいと思います。

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人間文化学科 2年 佐々木愛果