キャリア支援企画(4)「シリーズ:心理学を現場で活かす~法務教官~」を開催しました

7月28日(金)の5校時に、「法務教官等に関する講習会」と題して、現職の法務教官の方をお招きして、少年院等の施設における「生の声」についてお話をうかがいました。心理学を少年犯罪に活かす仕事(公務員)について学びを深める機会です。

講師に、淵上泰郎氏(東北少年院 院長)、杉渕理恵子氏(東北少年院 法務教官)をお招きし、お話をうかがいました。

まず初めに、淵上氏から少年犯罪の実態についてお話しいただきました。少年による刑法犯検挙人員・人口比の推移、入院者の教育程度別構成比、非行名・年齢層別構成比などについてデータをお示しいただいた後、実際の矯正教育や就労支援、そして退院者へのケアなどについて図表をまじえながら詳しく丁寧に説明いただきました。これらにより、非行が起きる背景や再非行の防止について理解を深めることができました。

 次に杉渕氏からは、少年院では多くの大人(専門家)が少年たちと関わっていることをご説明いただいた後、少年との実際の関わりについて、お話いただきました。その内容は、心理学的な視点が必要となってくるケースがほとんどであり、心理学的にアプローチするプログラムをいくつかご説明いただきました。その一つとして「マインドフルネス」のワークである「呼吸瞑想」を実際に体験してみました。体験を通して「今ここ」に意識を向けることで、外部の情報ではなく自分の今の状態の気づきを高める効果があることを学生たちも実感したようです。

最後に、女性が働きやすい職場環境であることもご説明をいただき、職業としての法務教官のまた違った側面を知ることができました。

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以下に、参加者の感想の一部をご紹介します。

・少年院にネガティブな印象を持っていたが、講義を受けて印象が変化した。

・少年院は、非行をした少年を見放すことなく、社会復帰できるようサポートする場であることがわかった。フォローアップ指導や個別面接では、自分の非行への対処法などを先生方の力を借りながら自分で考えられることが素晴らしいと思った。

・入院者の数には、時代の影響があることを知った。また、少年院の環境がとても整っているということを学んだ。親身になって少年たちと関わることができる法務教官という職業にとても魅力を感じた。将来の選択を広げることができた。

・犯罪を肯定することはできないが、そうせざるを得ない環境であったりなど、考えさせられることが多々あると感じた。

・親に虐待を受けた経験が、犯罪につながることもあり、心理学を学んでいる上でどのようにそれが活かせるのかを改めて考えたいと感じた。

・女性が働きやすい職場であるという話は少し驚いた。子育ての制度などを聞くと、個人の事情に対応できる良い職場環境だと思った。ドラマやバラエティ、文字だけでは分からなかった実際の具体的な話をたくさん聞くことができ、本当にいい機会だった。

・一人一人に真剣に向き合う仕事は、生半可な気持ちでは到底できないことだと思うが、学んでいる心理学という学問が、こういった仕事につながる可能性があることを知ることができた。

・「10回裏切られたら11回信じる」といった言葉を聞いて安心感と尊敬の念を覚えた。

・少年院の世界には多くの大人が関わっており、それぞれの人が真剣に少年と向き合っているということを強く感じることができた。大人に対する不信感について何回でも信じて心の扉が開くまで待ってあげるという本気で人と向き合う姿勢に、話を聞いてとても胸を打たれた。

・「自分に自信がないとやっていけない」という言葉が印象的だった。教える立場である教官が、自分に自信がなく軸がちゃんとしていなければ、少年たちの信用を得ることができないと感じた。

少年たちと真摯に向き合う熱量が伝わり、働くことそのものについて考える機会になったようです。また、心理学を活かせる場としての法務教官を知ることができ、学生たちの視野も広がったようでした。

(千葉陽子記)