【実践研修・現場部】仙台家庭裁判所を訪問しました

10月18日(月),2021年度「現場部」活動として,本学科の2~4年生15名が仙台家庭裁判所を訪問しました。家庭裁判所は家事事件と少年事件を扱う裁判所で,そこで働く家庭裁判所調査官は,心理学を学んだ人が目指す専門職の一つです。

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当日は,まず,家庭裁判所調査官の方に,家庭裁判所および家庭裁判所調査官の仕事についてご説明をいただきました。その後,意見交換の時間をいただきました。事前にお届けしていた参加学生からの質問集も活用しながら, 離婚後の両親にそれぞれ新しいパートナーができた場合の面会交流についての最近の考え方,非行少年に対する教育的働きかけにはどのようなものがあるのか,コロナ禍での家庭裁判所の対応など,学生たちからの様々な質問にお答えいただきました。
最後に,家庭裁判所内の見学をさせていただきました。小グループに分かれて,少年審判廷,面接室,児童室(プレイルーム)を見せていただきました。裁判所敷地内は写真撮影ができませんので,画像でお見せすることはできませんが,プライバシー保護に非常に配慮がなされた空間で,また,一人一人を尊重する姿勢がよくわかりました。

当初は,夏季休暇中の9月1日に訪問予定でしたが,コロナ感染拡大の影響で延期となりました。訪問に向けて,お盆明けから動画による事前学習をしていましたので,1か月半遅れとなりましたが,無事訪問できて事前学習の内容を実際により深く知ることができました。
事後課題のレポートでは,「家庭に平和を、少年に希望を」という言葉が印象的であった,家庭裁判所というところについての見方が変わった,心理学を活かせる場であることがわかった,という感想が多数寄せられました。以下に,学生の感想を抜粋してご紹介します。

家庭裁判所調査官のお仕事についてお話いただき,家庭裁判所内を案内くださった仙台家庭裁判所の皆様に感謝申し上げます。

<見方の変化>

  •  家庭裁判所は、未来について親身になって一緒に考えてくれる場所であると感じた。また、調査官の方についても、心が強くて温かい優しい方たちだと思った。
  •  「家庭裁判所」、「家庭裁判所調査官」は堅く厳しいイメージだったが,現場に行き,現場で働いている人に話を聞いてみると,厳しい対応が「少年に幸せになってほしいから」であり、「少年のためを思って」という心がすべてのことの根本にあるということを知り,イメージが大きく変わった。

<家庭裁判所調査官の仕事について>

  • 家庭裁判所調査官は様々な人の人生の転換点に寄り添い、法律だけでは解決できない問題を解決に導く役割を担っている、とてもやりがいのある職業だと思った。
  • 家庭裁判所調査官の仕事は、様々な角度から少年のことを調べ、1人1人にあった結論を導き出していくという非常にエネルギーが必要なものであるが、誰かの助けになる魅力的な仕事でもあると思った。
  •  昔と現在の家庭の環境や少年が非行に及んでしまう背景も変化してきている。「一生を通して学びの多い仕事」と仰っていたのがとても印象的だった。
  •  家庭裁判所調査官の方々のお話を伺っていると、少年や家事事件の当事者の話に親身になって耳を傾け、彼らと共に問題を解決していくという姿勢に想像以上の「あたたかさ」を感じた。

<少年事件について>

  •  少年に罰を与えることが目的なのではなく、その問題の背景を解決することが目的であることを学んだ。
  •  少年事件では、大人の事件とは違い、少年らの未来を見据え更生や、再非行防止に勤めている点が大きいことや、面接の際も厳しく言うだけでなく、少年の背景も考え面接することを学んだ。非行をしてしまった事実は変えられないが、未来ある少年であることにも変わりはなく、一人一人に向き合っている裁判所職員の方々の真摯さを感じた。
  •  一人一人の少年に適切だと思われる働きかけがされていることを,具体的に知ることができた。

<学んだことを日常に活かす>

  •  「面接の際には、当たり前のことかもしれないけれど、話を聴くことを大切にしている」とうかがい,目の前の人に真摯に向き合い,話をきちんと聴くことの大事さを改めて学んだ。
  •  家庭裁判所調査官の「物事の背景を知り、適切な働きかけをする」という方針は,日常生活でも役立てることができると思った。

<心理学が活かされる現場・今後の学び>

  • 実際に見学にうかがって,家庭裁判所調査官は心想像以上に密接に心理学と関わりのある職業だと知ることができた。
  • 自分の学んでいる心理学が,誰かを助け・救うことにつながること,大学での学びと社会の繋がりを初めて感じられた。学びがどのように活かされているのかを外側から見てみることも,学びを深めるために必要なことだと感じた。
  • 進路に1つの新しい選択肢が増えた。国家公務員の試験は決して簡単ではないと思うが,心理学を活かして仕事をしていきたいので今後も情報収集を続けたいと思った。
  • 心理学が関わる仕事の幅広さを実感させられた。これからも色々なイベントに参加して自分の心理学に関する知識を深めていきたい。
  • 大学で学んでいる心理学が様々な現場で役立つものであることが分かった。将来生かしていきたいという気持ちがより高まった。普段の大学での心理学の学びをもっと深めていきたい。

「現場部」は, “心理学は,机の上だけでは学べない”という本学科のモットーを体現化した企画で,2014年度に当時の在学生の希望で始まりました。さまざまな「現場」に足を運び,自分の目で見て,自分の耳で聞くなど五感をフル活用して現場を感じ,そこから心理学の学びを見出す企画で,「心理学実践研修B」という授業の一部に位置づけられています。これまでに,JAXA筑波宇宙センター,宮城県科学捜査研究所,松島水族館(現在は閉館),東北少年院,青葉女子学園,仙台鑑別所,新日鐵住金・安全体験教育プログラム,東北電力・女川原子力発電所,人と防災未来センター(神戸市),祈りの杜(尼崎市:福知山線列車事故現場)などを訪れてきました。

(木野記)