自転車
末光 眞希
学長兼任ということで、ずっと園に居ることは出来ないのですが、時間の許す限り毎朝、園児たちをお迎えするようにしています。子どもたちもすぐになついてくれ、二日目から「園長先生!」とか「まき先生!」とか呼んでくれるのを聴くと、もうたまりません。疲れも一気に吹き飛びます。縄跳びが飛べるようになったことの認定を頼まれたり、お母さんから離れるのが辛くて泣きじゃくる子どもを笑わせたり、おままごとのご馳走に呼ばれたり、結構忙しい毎日です。
時間節約のため、学長室との行き帰りに自転車によく乗ります。学長室のある本館からこども園までは下り坂一本。送迎の保護者の皆さんに恥ずかしい姿をお見せしながら、新緑の木立の中を駆け降りていくのは何ものにも代えがたい気持ちよさです。(帰りの登り坂のことは忘れることにしましょう。)
お子さま方は自転車に補助輪なしで乗れますでしょうか。私は長男に自転車の乗り方を教えた時のことを時々思い出します。息子は振り向きながら言うのです。「いい、お父さん、ちゃんと後ろ持っててね!でないと僕、倒れちゃうんだからね!」「わかったよ」。子どもは安心して漕ぎ出します。「お父さん、後ろ持ってる?」「うん、持ってるよ」。こう声をかけ続けながら父はそっと手を離し、それを知らぬ子どもは一人で自転車を漕ぎ出します。
この話、子どもと親の関係をとても象徴的に表していると思います。親が後ろでしっかりと支えてくれてることを知るからこそ、子どもは「冒険」ができるのです。過保護を心配する声はどの時代にも必ずありますが、そんな声は放っておきましょう。親の愛を思いっきり注いであげてください。そのことが子どもの自立を促します。
私たちと神様の関係も同じだと、ある日気付きました。神様は後ろでしっかりと私たちを 支えてくださる。だからこそ、私たちは人生のペダルを自分で踏み込むことができるのです。私たちがペダルが踏み込まないと何も始まらない!ではないのです。「大丈夫!」っていう信頼の気持ちが大切です。苦しい日々が続きます。これからも、イェスさまの愛をしんじて歩んで行きましょう。
(もりのこどもえんだより2022年5月号掲載)