6月18日(水)、音楽館ハンセン記念ホールで、特別教育計画を開催しました。
第9回 仙台国際音楽コンクール ピアノ部門審査員のダン・タイ・ソン先生をお招きし、公開レッスンを行いました。
先生は、1980年 第10回ショパン国際ピアノコンクールでアジア人として初めて優勝を果たされ、その後、国際的ピアニストとして演奏活動を行ってこられました。近年は優れた教育者として多くのピアニストを育てておられます。先生の宮城学院での公開レッスンは、2016年、2022年に続いて、今回が3回目になります。
今回は、音楽科学生が、スクリャービン作曲 ピアノ・ソナタ 第2番 嬰ト短調「幻想ソナタ」作品19の第1楽章を受講しました。
先生は、まず、スクリャービンやラフマニノフをはじめとするロシアの音楽について話されました。ロシアの音楽が生まれ、発展していった背景には、西ヨーロッパの音楽とは異なる点があります。ロシア人の国民性、文化的背景が音楽にあらわれているといえるでしょう。ロシアの音楽を学ぶときには地理的背景・歴史的背景・文化的背景などを多角的に学び、理解を深めることが大切、と話してくださいました。
スクリャービンの音楽は前期と後期で作曲語法が大きく異なります。
前期は、後期ロマン派にあたる時期で、叙情的で情熱的な作品が多く、後期になると抽象的で神秘的な独自の音楽へと変化していきます。
先生は、初期のスクリャービンの音楽に大きな影響を与えた人物として、ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス(Mikalojus Konstantinas Čiurlionis、1875-1911)を紹介してくださいました。
チュルリョーニスは、リトアニア出身の画家・作曲家です。彼の思想や独特な画風は当時の芸術家たちに大きな影響を与えました。スクリャービンとチュルリョーニスはお互いに刺激を与えあい、その交友関係から多くの作品が生まれました。
レッスンのなかでは、この曲の演奏に求められる多彩な音色の出し方、タッチの変え方、フェルマータや休符の持つ意味、メロディーの歌い方など、様々なポイントをひとつひとつ丁寧に示してくださいました。
また、スクリャービンは若い頃に右手を故障していた時期があり、彼の作品のなかでは、左手の動きが重要となることなども、実際にご自身で演奏しながら説明してくださいました。
当日は、音楽科学生、本学教職員のほかに、一般の方々にも多数ご来場いただきました。それぞれ熱心にメモをとりながら、先生の言葉に耳を傾け、作品に対する理解を深めました。
国際コンクールの審査でお忙しいスケジュールのなか、本学を来訪くださり、素晴らしいレッスンをしてくださったダン・タイ・ソン先生に、会場からは大きな拍手が送られました。
◆特別教育計画「ダン・タイ・ソン先生によるピアノ公開レッスン」[2025年6月18日(水)]についてはこちら