環境文化見学研修 「台湾」 〜台北編

生活文化デザイン学科の授業、「環境文化見学実習」では隔年で海外研修をおこなっています。近年はコロナや海外の政情不安等で実施ができない期間が続きましたが、今年度はようやく海外実習が実現しました。行き先は「台湾」です。

与那国島からわずかに107km、本当に近い国、台湾です。多くの日本人にとっても、台湾料理、インバウンド、IT、家電、さらには50年におよぶ日本統治とその関係はたいへん深いものがあります。一方で、台湾の歴史となるとあまり良く知られていないような気もします。知られていない理由の一つは、第二次世界大戦後の台湾の歴史とも大きく関わっています。今回は台湾近代史400年ということもあり、その端緒から、日本統治、台湾現代史に欠かせない蒋介石による国民党統治時代を概観しながら、その暮らし、環境、デザインなどを探求する研修です。

台北

まずは、台湾の首都である台北の見学です。亜熱帯の独特な朝の気候は、猛暑の日本と最高気温に違いはないものの、太陽高度、湿度、朝夕の気温などの違いから、日本のそれとはだいぶ違った体感です。快晴のもと、まずは台湾最古の寺院のひとつ、龍山寺を訪問しました。台湾で多く見られる神仏混合(概ね仏教と道教が混合している)の寺院となっていますが、日本の寺社建築とは形式や色彩感覚、さらには参拝の方法まで大きく異なります。

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天(空)と本尊にお祈りを捧げてから、独特の占い作法に則っておみくじ(のようなもの)をひきました。縁結びの神様に一喜一憂(当たると赤い糸をもらえる)、学問、健康など多彩な神様にもお参りを欠かしてはいけません。

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龍山寺周辺は萬華(まんか、ワンホウ)とよばれ、先住民の時代から淡水河からの物資の積み下ろしが行われた賑やかな場所でしたが、現在は商業地区の中心が他に移動したこともあり、清朝時代、日本統治時代の建物や町並みをつたえる歴史的な地区となっています。

その後、総統府(日本統治時代の総督府)を外から見学後、中正紀念堂を見学しました。

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この巨大な八角形の建物は、蒋介石(本名は蒋中正、介石は字な)の偉業をつたえる建物として建設されました。その後、国民党の一党独裁も終わりを迎え戒厳令がとかれると、蒋介石の評価は台湾の人にとって複雑なものとなりました。日本統治の終焉(世界大戦の日本の敗北)と台湾返還、国共内戦をへて台湾統治と戒厳令、二二八事件や政敵への人権侵害など、展示もその功罪両面を紹介するかたちになっています。日本との関係も含めて、台湾の歴史を語るうえで欠かせない時代であり、見学した学生も多くを学ぶことができました。

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蝋人形の蒋介石はかなり生生しいですね。

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その後、飲茶の昼食をとり、迪化街(てきかがい、ティーホアジェ)を散策しました。ここでも寺院を参拝後、古い問屋街や日本統治時代の建物をリノベーションした新しい店舗を見学しました。古い町並みと、上書きされていく現代の商業施設の絶妙な融合は、日本の元気のない商店街や古い中心部の活性化のヒントをくれるかもしれません。もちろん学生はお買い物もかかさず、いつの間にか手にはお土産の袋で溢れていました。

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台湾では2000年代以降、多くの内外の建築家が公共施設を手掛けていますが、その提案は非常にラディカルなものも多く、物議を醸しているものもあります。特に、オランダや日本の建築家が手掛けた施設はその影響から、地域開発と一体となり、まちづくり、都市開発とも密接に関わっていて、不動産投資などにも大きな影響をもっています。研修ではその一つ、オランダの建築家集団OMAによる台北パフォーミングアーツセンターを見学しました。

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建築ガイドが常駐しているこの施設は、3つのホール(2つを合体すると4種類)をもつ複合施設です。巨大なピロティー空間や一般開放されたロビー空間などをも、新しい都市の結節点として賑わっています(この敷地はかつては川の上でした)。シアター内部や搬入スペース、バックヤードなどを詳しい解説つきで見学してそのチャレンジングな劇場空間を堪能しました。

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夕食は士林夜市で各自台湾屋台グルメに挑戦、夜市の文化は台湾をはじめとする東南アジア独特のものかもしれません。台湾の人のパワーを直に体験したといったところでしょうか。

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翌日の自由時間は学生がそれぞれ自分で旅程をたて、興味のあるところを訪れました。近郊の名所、九份(きゅうふん、チウフェン)まで足をのばした学生も多かったようです。