「石巻市・女川町復興支援インターン」活動報告

 英文学科 1年 渡辺華奏未

  復興大学主催の「石巻市・女川町復興支援インターン」が9月8日(月)~9月13日(土)の5泊6日のプログラムで行われました。これは日本全国の学生が被災企業で職業体験し、被災地および被災地産業の現状、復興状況や課題について感じ、学んだ経験をもとに全国各地で情報発信することを目的とした活動です。

  1日目は、石巻と女川をバスで回りながら語り部聴講が行われました。2日目~5日目は3、4人に分かれて各企業へインターン、最終日は振り返り報告会を行いました。 

 私は『株式会社木の家石巻水産』さんへインターンに行きました。この企業は鯨の食文化の保存に力を入れており、鯨をはじめ秋刀魚や鯖などの缶詰を製造しています。 

 木の家さんは、「他の会社ではやっていないことをして1番を目指そう」という企業理念があり、冷凍された魚を買い取って缶詰にするのが一般的なところを、冷凍せず鮮魚のまま缶詰にしています。そうすることで形のしっかりしたとてもおいしい缶詰になります。

 実際に試食してみましたが、それは私の「缶詰は味が濃くおいしくない」というイメージを覆すものでした。こんなにおいしい缶詰は初めてで、忙しい朝ごはんのおかずにぴったりだと思いました。さらにラベルのデザインも凝っており、高級感があるので贈り物にも良いと思います。

 理念が反映されているのは商品だけでなく、建物は水産加工工場らしくない鯨をイメージした外見とオシャレな内装になっており、工場見学の設備も整えられています。さらに管理職と作業部門の壁があまりなく雰囲気が良いのもあり、非常に魅力的な企業でした。

 主な活動としては、魚のカットから缶詰になるまでの流れ作業の一部分を体験させて頂きました。機械で大量生産しているイメージがあったのですが、実際には手作業が多く一つ一つ丁寧に作っている印象を受けました。流れ作業は同じことの繰り返しなので、慣れてしまえばスムーズに出来るようになりますが、それを長時間続けるのは辛いことだと感じました。

 また、片付けになると自主的に行動しなければならず、私は足手まといにならないようにするので精一杯でした。自分の持ち場の清掃が終わり他も手が足りていた時、作業員の方から壁を拭くよう言われました。その作業員の方は私と同い年でした。その方は壁を拭き終った後も、他の人がまだ作業していたためゴミを回収するなど、自分にできることを考えて行動していました。

 私はその日の活動を通して、当たり前のことですが、人に言われる前に自分で考えて行動することの重要さを再認識しました。その日一緒に活動した作業員の方たちは皆仲がとても良く、私に何度も話しかけてくれる面白い方もいたので、作業は辛かったのですが、帰るのが名残惜しく感じられてしまうほどでした。 

 また、作業の他にも副社長さんや広報の方、直売所の方から企業と震災についてお話を伺いました。震災前の工場は津波によって流されてしまい一からのスタートでしたが、震災からたった1ヶ月で商品開発を開始し現在では工場も再建されました。

 このことを聞くと想像よりも早い復旧で、もうだいぶ落ち着いたのではと思ってしまいますが、工場が再建されるまで3年間のブランクがあったため、今年を1年目として3年計画でこれから本格的に動き出していくそうです。 

 私達は震災からの復旧と今の状況について伺った上で、より多くの人にこの企業の商品を知ってもらい石巻地域の水産業を盛り上げるためにはどうすれば良いのか企業さんと意見交換を行いましたが、そこで企業の現状と本音というものに触れました。

 早く会社を建て直していかなければならないと震災から休む暇なく走り続けましたが、逆に世間から復興を急かされ重圧やプレッシャーを感じてしまうこともあったそうです。「正直心も体も疲れてしまった」という声も聞きました。色々やりたいことがあっても人も時間もまだ余裕が無いのが現状です。私達はこのようなただ表面を見ただけではわからないことを知ることができ、これは木の家さんだけではなく他の企業、また企業以外でも共通しているものだと思いました。そんな余裕のない中で木の屋さんが私達をインターン生として受け入れてくださったことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

  今回インターンに参加して、企業と地域の課題解決に向けてどうすればよいか考えましたが答えはすぐに出るものではなく、自分にできるのはほんの些細なことだけだと痛感しました。津波が襲った沿岸部は今も更地のままとなっており、何も知らない人が見たらそこには最初から何もなかったかのような感覚にとらわれることもあります。

 しかしそこには多くの家が立ち並び、たくさんの笑顔がありました。地元の人から見ればそこは異質な場所であり、近づきたくないと思う人も少なからずいます。女川では元の場所に家はもう建てられず高台移転が進んでいますが、人口流失が深刻な問題となっています。そんな石巻、女川を盛り上げるために私には何ができるのかというのを考えたとき、インターンに行った木の屋の商品をはじめ、石巻や女川の物を「買う」ことだという考えに至りました。

 売り上げが伸びれば雇用が増え、雇用が増えれば会社の近くに住もうとする人が増えます。人が増えれば最終的に活気があふれる街になるのです。また、復興支援インターンの目的にもある通り、今回の活動で感じ、学んだ経験を発信しより多くの人に石巻と女川を知ってもらうことも大切だと考えました。そのために、ここに活動報告として掲載することが私にできるアクションの一つだと思っています。

  今回の経験を忘れず、地元石巻、その他被災地をみんなが明るい気持ちで過ごせる良い町にできるよう、自分にできることを日々考え行動を起こしていきたいです。