音楽科(2015年3月卒業) 引地 理恵
3月22日(日)に名取市立閖上中学校の仮設体育館にて「はなももコンサート」を開催しました。このコンサートを企画するきっかけとなったのは、昨年5月まで遡ります。私は母校の名取市立閖上中学校で3週間教育実習をさせて頂きましたが、その時の「閖上の子どもたちのために何かしてくれませんか」という校長の武田先生の何気ない一言から始まりました。それからずっと何か出来ることはないか、と思いながら良い案が浮かばないまま、時間だけが過ぎてしまいました。
活動のための助成金を申請するなど実現に向けて力を尽くしました。最終的に、野沢先生が大学の方に掛け合ってくださり、何とか実現できることとなり、閖上中の武田校長先生の許可もいただき、多くの方が楽しめるコンサートの開催へと動き出しました。
私は被災して数えきれないくらい多くの方々に支えられ、今があります。その感謝の気持ちを届けたい、被災した私自身に何かできることはないか、という思いを込め、このコンサートを企画しました。また閖上地区はもともとひとつの地区でした。しかし閖上の皆さんは今別々の仮設住宅で暮らしています。震災前のようにご近所で会うことはなかなか難しいため、今回のコンサートが再会のひとつの機会になればと思ったことも理由のひとつです。コンサートの名前の「はなもも」とは名取市の市の花です。私は名取生まれ名取育ちで名取市が大好きでしたので、この名前を選びました。
コンサート当日まで、校長先生と頻繁に連絡を取り進めました。当日の動きやお借りするものの確認、バスの手配、ピアノ調律とチラシ配布のお願いなど、他にもたくさんご協力いただきました。普段の校務でご多忙にも関わらず、快くお引き受けいただき、言葉では言い尽くせないほど、感謝の気持ちでいっぱいです。
またメンバー集めや合唱の選曲、練習日程の調整、ソリストメンバーへの出演依頼、合唱指導も行いました。こちらは友人二人と共に協力し、進めました。今まで様々な演奏ボランティアをしてきましたが、春休み中の活動は初めてだったので、参加者が集まるか不安でしたが、予想をはるかに超える仲間が集まってくれたことに驚いたと同時にとても嬉しく感じました。
前日まで新聞社2社の取材を受け、震災時のことや「はなももコンサート」を企画するに当たっての経緯などを尋ねられました。
当日の会場受付は、しごと旅プロジェクトの国際文化学科の学生2名と小学生2名にお手伝いをお願いしました。プログラムの配布や演奏者が使用する譜面台の出し入れなどを、主に担当していただきました。小学生も楽しそうに仕事をしてくれました。ふたりともピアノを習っているようで、この経験がこれから少しでも役に立てばと思います。
プログラムは二部構成で、一部をソロ、二部を合唱にしました。ソロのプログラムは、3重唱、フルート、ヴァイオリン、独唱、最後に再び3重唱とし、「愛の挨拶」など名曲を取り入れ、ソリスト8名は演奏会用のドレスを着て演奏しました。体育館の空気がいっぺんに華やぎ、会場から歓声が聞こえたほどです。曲目の紹介は演奏者がしました。お客さん全員がじっくりと演奏に聞き入っている様子でした。
休憩を挟み、第二部の合唱へと移り、ここからは私が曲目の紹介をしました。小学生にも楽しめるよう「ジブリメドレー」や「Let it Go」、私と音楽科なかにしあかね教授の作曲した合唱曲、そして最後に「花は咲く」を歌いました。曲によって、フルートやヴァイオリンを加え、歌のソロも入れました。第一部から、曲の間でたくさんの拍手をいただき、皆いつも以上に張り切って演奏してくれたと思います。「花は咲く」やアンコールの「ふるさと」では、プログラムに載せた歌詞を見ながら会場の皆さんが加わり、ひとつの大きな歌声になりました。中にはハンカチで目頭を押さえるお客さんもいらっしゃいました。
被災した私自身が動くことで、仮設の皆さん、被災者の方が少しでも元気になれるよう、これからもこのような活動を続けていきたいと思います。今回協力していただいた皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。