文芸評論家 池上冬樹氏の講演会を開催しました

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日本文学科では1月11日に日本文学会と共催で、文芸評論家の池上冬樹氏をお招きし「文学のいま―新人賞選考・文学の潮流・作家たちの苦悩」と題して講演会を開催しました。

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文芸評論家 池上冬樹氏

池上冬樹氏は山形在住の文芸評論家で、週刊文春、小説すばる、ミステリマガジン、文藝春秋、日本経済新聞といった数え切れない程の著名な雑誌社・新聞社でご活躍されております。また、本の帯の推薦文や文庫解説、さらには複数の新人賞の予選委員・下読みも担当されております。

講演会では、まさに「文学のいま」を知る池上氏ならではの、大変興味深く刺激的なお話が展開されました。メモを取っていた学生達のペンが追いつかないくらいの情報量に溢れた非常に濃密な80分となりました。

私達が知らない世界、新人賞という世界に、日々飛び込んでくるたくさんの作家の卵たち。池上氏によると、最初の1行、最初の1頁で、書き手の力がわかるそうです。作家になりたいのならば、とにかく書いて書いてかきまくる。書き続けることで、自分が一体何を書きたいのかが見えてくる― その、どのくらい書いているのかということが感じ取れるのが最初の1頁ということでした。

選考委員を担当していると文学の潮流がわかってくるというお話や、新人賞に応募する際の秘訣のようなことも教えていただきました。多くの有名な作家達と親交がある池上氏だからこその作家にまつわるエピソードには、参加者全員笑顔になりました。ike2

池上氏からは、少しでも作家になりたいという気持ちがあるのなら、ぜひとも挑戦すべきだという熱いエールを頂戴しました。チャンスはどこにでも転がっている。このチャンスを積極的に拾っていかねばならない。欠点があっても長所を伸ばすことが重要。その人が持つ個性、その人だから創り出せる物語が大事。ほかと同じではいけない。今の時代、パソコンが一台あればいつでも書けるのだから、という池上氏の奮い立たせる言葉に胸が熱くなりました。

池上氏の活動は多岐にわたり、山形では「小説家(ライター)になろう講座」を、仙台では「せんだい文学塾」の世話役兼講師も務めてらっしゃるそうです。この講座では、作家を志す人達が、実際に自分の作品をプロに指導してもらえるという画期的な試みが行われております。自分で書いた作品は正面からしか見えませんが、ここではあらゆる角度から他者に見てもらえます。プロとは、もちろん文芸評論家である池上氏、出版社に勤務される編集者、そして月ごと異なる作家達です。詳細は上述HPに記載されておりますが、日本を代表する作家達に会える快感だけでなく、自分の書き上げた作品を批評・評価してもらえるという興奮と緊張も味わえる素晴らしい機会を、池上氏が作ってくださっているのです。

ike4最後に池上氏から、若い人達は咲き誇った花だけに目を向けるが、本当に大事なのは根っこの部分である。毎年同じように花を咲き続けさせるためには土壌が一番重要なのだというメッセージを頂き、会場となった小ホールを満員にした参加者達にとって目から鱗の80分間にわたる講演会はお開きとなりました。