「警視総監殿、今、義理と人情は、女がやっております!」
4月26日(木)、宮城学院女子大学学芸学部日本文学科では、2018年度特別企画の第一弾として、★☆北区AKT STAGEによる「熱海殺人事件 女・木村伝兵衛バージョン」を上演しました!
日本文学科には「身体表現」という授業があります。声とからだを使って日本語の美しさや豊かさ、何よりコミュニケーションの難しさ…と、だからこそ得られる達成感…に気づくことができる授業です。実際、日文には演劇好きな学生が多いと思います。
さて今回、日本文学科では東京から★☆北区AKT STAGEの皆さんをお迎えして、つかこうへい不朽の名作『熱海殺人事件』を上演いたしました!
熱海で起きたとある殺人事件。その捜査を担当する部長刑事、木村伝兵衛役に、紅一点、大滝樹(いつき)さん。知性、美貌、溢れんばかりの生命力とパッションを備えた女優さんです。ご覧になった方々は皆、大滝さんが全身全霊で演じる木村伝兵衛に目を奪われたことでしょう。アクションシーンの切れの良さ、次から次へと畳み掛けるように飛び出す膨大な台詞、しなやかな肢体、きびきびとした動き、そして何より力強い眼差し。……圧倒されました。ゾッとするくらい魅力的でした。活気に満ち、人を惹きつけてやまないステキな女優さんです。
八王子署から転任してきた熊田留吉刑事を演じるのは小山蓮司さん。役の名前こそ古くさくて田舎臭いのですが(笑)、演じている小山蓮司さんは爽やかな好青年! 熊田刑事は木村伝兵衛部長刑事との過去(青春!)を胸に秘めながら、今を生きています。威勢が良く度胸もありそうに見えて、実は意外と押しに弱い一面があったり、人付き合いがとても良かったりという、とても人間くさい刑事さんです。
木村伝兵衛の部下、万平刑事。木村明弘さん演じる万平刑事には秘密があります。人に知られたら顰蹙ものです。恥をかきます。差別されます。そのために、万平刑事は故郷に戻れずにいました。万平刑事役の木村さんは、優しそうな方なのに、表情が見る見るうちに一変し白熱の演技をされる存在感のある俳優さんです。万平刑事は、最後には長年お仕えしてきた木村伝兵衛部長刑事のもとを去り、故郷に戻ることになりますが、見ている私たちも思わず万平刑事に感情移入してしまい、数十台のパトカーに先導されて故郷に凱旋し、ご両親と再会して涙ぐむ場面を想像してしまいました。
最後に山口アイ子殺害事件の容疑者、大山金太郎。大江裕斗さんが情熱的に演じました。殺人犯なのに愛嬌があって、親しみを感じる俳優さんです。見るからに人懐っこそうな大江さんが演じることで、容疑者大山金太郎は、より人間味溢れる、憎めない容疑者になったのではないでしょうか。大山金太郎の故郷を守ろうとする熱い思い、幼馴染の山口アイ子への想い……、複雑な思いが入り乱れ、大山金太郎は罪を犯してしまいます。それは衝動的だったのか、それとも計画的だったのか。大江さんのダイナミックな演技に引き込まれてしまいました。
演技、台詞、音楽、照明、すべてが見事に絡み合い、まるでジェットコースターのように物凄いスピードで最後の場面に向かって突き進んでいく密度の濃い展開に、見ている私たちはまばたきするのさえもったいなく、息をするのも忘れるくらいでした。
最後の場面、一人取り残された孤高の刑事木村伝兵衛が拳を高く上げて叫びます。
「警視総監殿、今、義理と人情は、女がやっております!」
……圧巻でした。
★☆北区AKT STAGE×宮城学院女子大学学芸学部日本文学科がお送りした「熱海殺人事件 女・木村伝兵衛バージョン」。会場の小ホールは大勢のお客様でいっぱい。公演終了後のアフタートークには、遅い時間にもかかわらず来場者の半数以上の方々が残ってくださいました。
ご来場いただきました皆さま、本当にありがとうございました。
皆さまとこの日、この時、この会場に居合わせたことを、心から幸福に思います。
★☆北区AKT STAGEの皆さま、心沸き立つような特別な時間をありがとうございました!