翻案『トロイ戦争はおこらない』動画を作成しました
2018年度前期「特殊研究(ヨーロッパの文学)」の受講生4名が作成した、翻案『トロイ戦争は起こらない』(原作:ジャン・ジロドゥ、1935年フランス)の音読が、動画にまとめられました。(動画はこちらからどうぞ)
ナチスが台頭してきた1930年代後半、次の世界大戦の足音が聞こえてくるフランスで、作家ジャン・ジロドゥによって書かれたこの作品は、ホメロスの叙事詩『イーリアス』に登場する「トロイ戦争」勃発前日のトロイ王国を舞台とした物語。強大なギリシアとの開戦を避けようと奔走するトロイ王子エクトールの夢が打ち砕かれる悲壮感は、パリでの初演時に喝采を浴び、以来この戯曲は世界的に読まれ、上演され続けています。日本でも、最近では2017年に新国立劇場で新演出が上演されました。
ギリシア神話の物語に多くを負うこの物語を読み、調べ、人物の来歴や性格は場面設定を理解し、セリフをリライトし、15分程度の「耳で聴くドラマ」にまとめるというタスクを経て、受講生たちは、遠い昔の神話の世界が、自分の人生と二重写しになる稀有な経験を積み重ねていきました。
【4人の出演者たちの声】
日本文学科3年 庄子愛乃(パリス役、ト書き)
時代背景や、台詞の裏にある人物の思いについて話し合いを深める授業でした。動画には登場しないアンドロマック役をずっとやっていましたが、急遽配役がパリスに変更になり、感情移入をすることに少々時間がかかりました。総じて、冗談を交えたり和気あいあいと出来て楽しかったです。
英文学科3年 説田芙実(エクトール役)
早口の癖に滑舌の悪い私なのに、先生に一番セリフの多いエクトール役をやりなさいと言われました(なぜに!!!)収録中は、身体中の穴といつ穴から臓物が裏返って飛び出しそうなのを押さえ込んでいる気分でした!!! クラスの人全員が口を揃えて言ってたことですが、この授業半年じゃ全然足らないです、せめて一年、理想は五年くらいやりたいくらいです。この授業を通して短期間でやりきることの難しさを学びました。この歯痒さを忘れずに他のことにも活かして行こうと思います。
英文学科3年 菅原知海(エレーヌ役)
元演劇部の人や歴史に詳しい人がいる中で、歴史の知識も演技の経験もない私には、作品を作り上げることにとても不安がありました。表現は難しかったし、役になりきり声色を変えることにも恥じらいがありました。しかし、いざ自分が演じる役を与えられるとその人物にとても興味を抱き、授業を通して理解を深め自分が与えられた役柄ならこの台詞はどのように読むだろうかと役に成り切って当時のことを考えることが楽しく感じられるようになりました。みんなに感謝です‼
日本文学科3年 渡部葵(カッサンドル役、演出、脚本ほか)
いろいろとやりました。台本を編作するのにも大分時間を要しました。みんなへの感謝の思いでいっぱいです。一番苦労したのは「何故この台詞をこの人が言うのか」を一文ずつ皆で話し合い、流れを汲み取るという演技指導でした。動画制作の段階では、先生と二人三脚で頑張り、ようやく完成した努力とユーモアの結晶です。
貴重な経験を詰め込んだ18分、それはとても素敵なのです! 自負があります! 見てくださった皆さんの心に、何かひとかけらでも残れば幸いです。