記念すべき第一回は,「つながり」についてお話ししたいと思います。
最近の私は,「つながり」こそが,人間や社会を発展させる原動力ではないかと考えています。
「つながり」とは何でしょうか?
多くの人は,「人と人とのつながり」をイメージするかもしれませんし,もちろんそれも含むのですが,
ここで私は,それに加えて,「物事と物事のつながり」もあわせて考えたいと思います。
「つながり」は力を生みます。
複数の人がつながれば,一人ではなしえなかったことができる。これは皆さん納得することだと思います。
このことは,「物事のつながり」についても,やはり言えるのではないかと思うのです。
ごく簡単な例で言うと,「火」と「食材」をつなげることによって,生では食べられなかったものが,食べられるようになります。
「電波」に「情報」をつなげることによって,テレビや電話という便利なものが出現します。
それぞれ単体ではあまり意味がなかったものが,つながりを持つことで,無限の可能性が引き出されるのです。
この場合,「組み合わせ」と言っても良いかもしれませんが,「つながり」の一種だと言えます。
そして,「つながり」は目に見えないものにも及びます。
「ニュートンはリンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見した」とよく言われます。
これは実は,よく誤解されていることですが,ニュートンは「重力」を発見したのではありません。
「リンゴは落ちるのに,なぜ月は落ちないのか」と考えることで,「万有引力」という着想を得たのです。
「リンゴ」と「月」という物体,「落下」という現象をつなげて,新たな考えを生み出したのです。
もっとも,この逸話は事実ではない可能性もありますが,それは置いておきましょう。
私が見る限り,多くの人が,「物事のつながり」に鈍感であるようです。
店で売られている商品は,ただそれだけの用途のために消費されていきます。
学校で学んだ知識は,単体の知識として,テストやクイズに答えるだけにしか使われず,
いろんな知識をつなげることは,なかなかしないものです。
しかし,それでは新しい力を生みません。
この一年間,『河北新報』では,「食の泉」というコラムがありまして,
そこに本学の先生,元本学の先生などがたくさんの記事を書いてきました。
年度が変わったとともに,この連載ももうすぐ終わってしまうのが残念ですが,
これこそ「食」をめぐる「つながり」を感じることができる,格好の材料だったと思います。
文学,歴史,地理,化学,生物,と,学校では別々の科目としてしか勉強しないことが,
「食」というテーマを軸にして,どんどんつながっていくのです。
そうすることで,知識は生きた知識になり,新たなものを創り出す可能性を秘めてくるのです。
人と人とのつながりも,もちろん大事ですが,物事と物事をつなげること,
そしてそこから新たなものを創り出すこと,これもまた大事なことだと思います。
勉強するとは,「つながり」を見つけること,と言えるかもしれません。
ところで,ニュートンは上のような法則を「突然」発見したのではないでしょう。
普段から地球や宇宙の構造について深く考えていたからこそ,
ふとした瞬間に,一見何気ない事柄を「つなげる」ことができたのだと思います。
「つながり」は力を生みますが,「つながり」を見つけ,創り出すためにも,また力が必要なようです。
その力はきっと,「考えること」で生み出されます。
「備忘録 思索の扉」は,考えたことを忘れないようにつづって,
それをつなげて新たな可能性を創り出したい,そんな想いを込めてつくった場所です。