こんにちは、発達臨床学科福祉コースの熊坂聡です。私は社会福祉援助技術(これを「ソーシャルワーク」と言います)の科目を担当しています。福祉現場で専門職として働いていたので、福祉の実践と理論をつないで実践の理論化をしていくことが私のテーマです。さて、今回は、私のこだわりのいくつかを紹介します。
教育者としてのこだわり
福祉教育で大切にしたいことは、社会福祉の学びが実際の福祉実践に役立つことです。そこで、授業の中で次の2つのことにこだわっています。1つ目は、学生が「なるほど」とか「そういうことか」とストーンと納得できる、腑に落ちることです。そこで、授業の組み立てには相当の時間をかけます。事例を用い、授業の中に作業を入れ、グループを組んでの練習をします。2つ目のこだわりは、こういう授業を具体化するためのツールです。
私の授業には、「リアクション・ぺーパー(授業の中で出す課題)」「課題レポート(簡単な宿題)」「個人カード(授業のふり返り)」という3種のワークシートが登場します。これらを用いて、学生参加型の授業にします。この授業風景は、ソーシャルワーク演習という授業で、専門職が家庭に訪問して生活相談にのるという場面を想定したグループ面接の練習をしているところです。
専門職としてのこだわり
私が知恵遅れの子どもや大人、高齢者の福祉現場にいた頃に思っていたことは、福祉の現場は専門職意識が薄い、高い専門的技術をもった人が足りない、社会的にも専門職としてあまり認められていないということでした。そこで、私は相談援助の専門職である「社会福祉士」という国家資格と高齢者の介護計画をたてる専門職である「介護支援専門員」という資格を取りました。欧米のように、日本でも福祉従事者の専門職化が進められていますが、その歴史はまだまだ浅いのです。そこで、私は専門職の養成にこだわっています。
昨年度以降講師を務めさせていただいた専門職養成研修は、実習指導者を養成する講習会(介護福祉士や社会福祉士を目指す学生の実習先の指導者養成)、現在働いている保育士の研修会、介護支援専門員の面接技術の研修、医療従事者の後継者育成に関する研修会などです。写真は、実習指導者講習会における実習スーパービジョンの技法を学ぶ練習をしているところです。このような機会を通して私自身が専門職養成の技術を磨いています。
研究者としてのこだわり
研究者としての私のこだわりは、福祉の現場にできるだけ近いところで研究し、実践の理論化をしていくことです。今関心をもっているのは、ソーシャルワーク教育のあり方、デンマークの福祉、福祉施設と施設職員の今後の役割、保育とソーシャルワークの関係についてです。昨年度は香港で開催されたソーシャルワーク合同世界会議に行き、ソーシャルワーク教育のワークショップに参加し、世界のソーシャルワーク教育を知る貴重な機会を得ました。デンマークは、東海大学の先生の企画に学生と共に参加し、保育園や幼稚園、特別支援学校などを視察し、デンマーク文化に触れてきました。なぜデンマークにこだわるかというと、ノーマライゼイションという世界の福祉を変える思想が誕生した福祉先進国だからであり、当面デンマークの福祉事情の調査研究をするつもりです。それに並行して来年度からは数年かけて日本の先進的な福祉施設の現場を巡って聞き取り調査を行い、福祉先進国の福祉事情と比較しながら、日本のこれからの施設福祉のあり方について調査研究するつもりです。「保育ソーシャルワーク」という表現が使われるようになりました。保育士養成を柱とする本学科に所属する者としては、保育とソーシャルワークの関係は興味深い領域です。保育所の中でどのようにソーシャルワーク業務が行なわれているかを調査研究しようと思っています。ソーシャルワーク感覚をもった保育士の養成に発展させていきたいと思っています。