日本文学科教授 田島 優

日本文学科の田島優(たじま・まさる)です。日本語に関わる科目(日本語学)を担当しています。日本語学の中でも、特に日本語史が専門です。日本語史といっても皆さんにはなじみがないかもしれませんが、日本語の歴史すなわち日本語がどのように変化してきたのかを明らかにすることを研究のテーマにしています。

 今、日本文学科で日本語学を教えていることは、高校時代の私にはとても想像できなかったことです。(高校の時の友人にもいつも言われています)その当時から研究者になりたいとは思っていました。そして理科系のクラスにいて、理学部へ進学しようと考えていました。

 受験勉強に取りかかるのが遅くて、希望の大学に受からず、予備校に通いました。その予備校での課題図書の中に、大野晋著『日本語の起源』(今、町の本屋で売っている新版ではありません)がありました。この本との出会いが私の人生を変えたとも言ってもいいでしょう。このように書くと格好(かっこ)いいですが、遊び過ぎて文転したのが真実かもしれません。この本の中に出てくる先生に、幸運にも大学で日本語学(私の学生時代は国語学と言っていました)を学ぶことができました。先生に「日本語の起源を勉強したいのですが、」とお話したところ、「あれは学問にならないよ」と答えられ、先生の研究テーマにも近く、また自分の関心のあった明治時代のことばを中心に研究を進めてきました。それは『近代漢字表記語の研究』(1998年)と『漱石と近代日本語』(2009年)という形でまとめることができました。

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またこのテーマとは別に、大学院の頃から始めた言語地理学の調査も自分の研究の根幹になっています。

 左に示したのは、私が調査した愛知県の奥三河の「おたまじゃくし」の方言地図です。言語地理学とは、方言調査で得られた方言形を記号化して地図上に表して(私の場合、昔ながらの紙にスタンプを押しながら)、そこからことばの動きやことばの移り変わりを知るものです。ここで学んだことは、文献でことばの変化を考えるのにとても役にたっています。

 奥三河のデータはまだ整理できていないので、定年後にじっくり取組もうと思っています。私の大学時代・大学院時代は、すばらしい多くの先生方に出会え、そして様々な学問に関心を持つことができ、大変恵まれた環境にあったと言えます。

 

 

 

 

 

 

 

日本語史の資料は、文字が書いてあれば何でも利用できますので、今世間で流行している断捨離とは縁遠い生活を送っています。昔から蒐集癖があるため、私の研究室には様々なものがあふれていて、そして日々増え続けています。どこに何があるのかわからず、必要なものが必要な時に取り出せないのにはちょっと困っています。なお、左側の写真は三遊亭円朝の速記本の一部です。右側は明治期の翻訳物の一部です。

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50(歳)を過ぎた途端に、これから研究できる範囲が見えてきて、研究の幅を次第に狭めています。そして、今では50代もなかばとなり、定年まで10年程になりました。これまで集めてきた資料を使わずに、このまま研究を終えてしまうのもちょっと寂しいですので、これらの資料を順次使用しながら講義を行っていこうと考えています。 

 皆さんとは、どのような資料を扱っている時にお会いできるでしょうか。お互いに楽しみにしていましょう。