教員のリレーエッセイ:人間文化学科 教授 菅野洋人

みなさん、こんにちは。人間文化学科の菅野(かんの)です。2024年3月まで郡山市立美術館で学芸員として勤務していました。準備室時代を含めると36年間になります。準備室に学芸員として採用されたのは、まだ昭和の時代。バブル経済真っ最中でした。周りの大人が渋谷とか六本木で踊りまくっていた、そんな時代です。

1992(平成4)年に開館した郡山市立美術館では、国内、海外、世の東西を問わず多くの美術展に関わり、なぜ美術館でこれを? というお叱りを時には受けつつも、ゴジラ、ウルトラマンから「きかんしゃトーマス」まで、様々な展覧会に関わってきました。そこで得たものは、仕事は楽しむことが第一、ということです。

01前職・郡山市立美術館での最後の集合写真_169w1920「ハーレムみたいにしようゼ!」といって撮影した
前職・郡山市立美術館での最後の集合写真(下段中央が私)

 

そんな経験をもとに、本学で私は授業を行う際に、ひとつ目標を立てることにしました。それは、これまで培ってきた、作品と接する楽しさをできる限り学生たちに伝えて、その反応を得ながら一緒に考えていくことです。

 

みなさんは、美術館や博物館を、勉強のために訪れる施設と思っていませんか? それはひとえに、鑑賞する、ということをあまり教えられてこなかったことが原因ではないかと思うのです。例えば私は小中学生の頃、先生や大人に、絵はある程度距離をもって見るものだ、と教えられていました。ですが、画家の息吹は作品の近くに寄って、その筆のタッチを味わわなければ感じることはできません。その画家がどういった速さで筆を動かしているのか、一回の筆の動きでどこまでその色を置いているのか、そしてその重なり具合は、などを確認するのは実に楽しいものです。

 

私は、作品というものは何であれその作家の分身だと思っています。ですから、観る側が少しでも興味をもてば、必ず作家との対話が生まれてきます。そこに気づけばシメたもの。美術館や博物館を訪れること、作品に触れることは楽しいことであることに気がつくことでしょう。それは、皆さんの人生がよりよいものになっていくことでもあります。私は、学生たちと一緒に、もっとそんな楽しい時間を過ごせる人間になりたいな、と思っています。

 

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02_2024年度学園祭での楽しいゼミ展示(菅野撮影)_169w19202024年度学園祭でのゼミ展示「おもちゃ絵の世界」
の楽しい展示作業(菅野撮影)

03_2024年度ゼミ旅行:東京国立博物館法隆寺宝物館へ(宮本柚奈撮影)

2024年度ゼミ旅行では上野・東京国立博物館の
知られざる名所、法隆寺宝物館へ(宮本柚奈撮影)