教員のリレーエッセイ:心理行動科学科 教授 木野 和代

みなさん、こんにちは。心理行動科学科の木野和代です。学科では感情心理学のセミナー(ゼミ)を担当しています。

リレーエッセイの担当は2011年の9月以来11年ぶりです。前回のリレーエッセイでは、4年次の卒業研究について少し触れましたが、その際に、怒りなどの感情を他者に語ること(社会的共有)を研究テーマの例として挙げました。その後も、このテーマに関する卒業研究はいくつか行われていますので、今回はその一つをご紹介します。

2年前には、「後悔」を他者に語るかについての研究に取り組んだ学生たちがいました。後悔については意思決定との関連についての先行研究が多くありますが、後悔を他者に語ることに焦点を当てた研究はみられず、彼女達の卒研は手探りのなか始まりました。研究のきっかけは、後悔をしたことを誰かに話すと問題が解決するからいい、という意見でしたが、研究グループの学生たちそれぞれに話を聞いてみると、自分は後悔を他者にあまり話さないとか、後悔したことを全て人に話すわけではないなど、話すかどうか自体にも違いがありました。そこで、後悔の共有実態を中心にその背景を探ることとしました。

調査の結果、他の感情の共有を扱った先行研究と比べると、後悔は共有率が低いこと、また最初に語る相手として親しい友人の比率が低く、両親の比率が高いことが分かりました。後悔感情の特徴として考察をはじめたのですが、そこはCOVID‑19が広がりはじめた時期に卒研に取り組んだ学生たちです。今回の結果に、外出自粛(ステイホーム)の影響がないかも考え始めました。そこで、さらなる分析をしてみると、両親には当日語り、友人には翌日以降にも語る傾向が見えてきました。つまり、後悔する出来事があったその日に会えたのは家族で、友人に話すとなると会う機会が限られるため翌日以降となったのかもしれないというのです。調査計画時には意識していなかったので、これ以上はステイホームの影響を検討することができなかったのですが、彼女達にとっては当初の想定以上にこのことが心に残ったようでした。

以上、卒業研究のプロセスを少しご紹介しましたが、彼女達について印象深かったことは研究内容以外の部分でもあります。それは、最初はリーダシップをとることができる一人の発言が研究を引っ張ってく感じだったのが、研究が進むにつれて、それぞれが自分の役割を意識して積極的に意見を出し合うようになっていったことです。このことは、彼女達にとっても大きな変化・達成だったのではないかと思います。社会人2年目の彼女達がそれぞれの道でどんな風に活躍されているのか、お話をうかがうのが楽しみです。

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ところで、今月の初めに、県内の高校2年生5名が、課題研究のために研究室を訪問くださいました。あらかじめ伺っていたご質問にお答えしながらいろいろとお話ししたのですが、この生徒さんたちが素晴らしかったのは、私の話をききながらメモをとるだけでなく、お話したことに対してさらなる質問を考えていたことです。それもお互いに別々の質問で、一層話が深まったように感じました。夏休み明けの中間報告会、是非頑張ってください!

そして、このエッセーをご覧くださった高校生の皆さん、高校の課題研究などで何かご質問や意見を聞きたいということがあれば、遠慮なく大学までご連絡くださいね。私がお答えできる範囲で、何かお役に立てることがあれば幸いです。