教員のリレーエッセイ:人間文化学科 准教授 櫻井 美幸

人間文化学科で西洋史を担当している櫻井美幸です。前回のエッセイでは、私がなぜ西洋史を志すようになったかについて書きました。私の専門は中・近世のドイツ史ですが、今回はドイツ繋がりでクリスマスマーケットについて書きたいと思います。

 

今では日本でも(宮学でも!)行われているクリスマスマーケットですが、基本的にドイツ語圏の冬の風物詩です。起源については、「ドレスデンだ」と数年前までは言われていました。これは、11月から12月に市場を開く権利の特許状を都市が都市領主から得たことを根拠にしていたからです。ドレスデン市は1434年に特許状を得ていた訳ですね。それから冬の市はクリスマス休み前の日用品などを売る市として、ドイツ都市に広まっていったのです。しかし、ドイツ語圏だけで行われていたクリスマスマーケットが、数十年前から他のヨーロッパ諸国に広まり始め、数年前からは世界中で有名になるに至って、「うちの方が起源が早い!」と言い出す都市が続出しました。そもそもドレスデンが根拠にしていたのが都市領主の特許状だったのですから仕方ありませんね。冬の市場開設権の特許状をふりかざして、起源はどんどん早くなっていきました。去年ミュンヘンが1310年の特許状を出してきた時、さすがに打ち止めかと思っていたのですが、今年ウィーンが何と1296年の特許状を出してきました!ここ数年で100年以上起源が早くなった訳です。
 

ミュンヘンのクリスマスマーケット

ロストックのクリスマスマーケット

 

ドイツのクリスマスマーケットで集めた
グリューワインのカップ

さて、最初は防寒具や日用品を売っていた冬のマーケットですが、次第に子どものためのプレゼントになるおもちゃや、ナッツや温かいワインなどの飲食物も売るようになっていきました。クリスマスツリー(ツリーの飾り)、クリスマスリース、くるみ割り人形などはすべてドイツ起源です。ドイツ人がクリスマスの飾りつけにかける情熱は半端なく、毎年のクリスマスマーケットで1つずつ(単価が高い)飾りを買って増やしていくのだそうです。日本のクリスマスマーケットは残念ながら大人がお酒を飲みながら飲み食いする場所になっていますが、数年前から宮学で始まったマーケットは少しでも本場の雰囲気を感じて欲しくて、家族全員楽しめるものになっています。今年のマーケットは中止になってしまいましたが(ドイツでもほぼ中止)、来年こそ、大人も子どももワクワクする本場ドイツのエッセンスを少しでも感じていただけたら嬉しいです。機会があれば是非冬のドイツにも行ってみてください。