教員のリレーエッセイ:生活文化デザイン学科 教授 大久保 尚子

ロンドンに渡った江戸の型紙、東京に生きる型染めの水脈

19世紀後期、幕末の開国後、日本美術工芸への注目―ジャポニズムが西洋社会に広がりました。浮世絵や着物が西洋の人々を魅了し絵画やデザインに影響を与えたのと同様に、日本で型染めに使われていた型紙も注目され収集されました。今ヨーロッパでは日本の型紙が各国でどのように受容されたのか、研究が進んでいます。

英国ミドルセックス大学博物館(MoDA)の染織研究員でジャポニズム期染色型紙コレクション研究者のマークハムまみこさんのご協力により、昨年11月~12月、ジャポニズム研究者、ゾーエ・ヘンドンさん(MoDA室長)とマークハムさんをお招きし、英国での型紙受容に関する公開講演会を本学で、型染め制作者を交えた公開シンポジウムを東京で行いました。
ヘンドンさんの講演は、19世紀末ロンドンの商業デザイナー、アーサー・シルバーが収集した型紙などの日本の資料とその影響に関するものでした(シルバー・スタジオコレクションはMoDAが継承)。シルバーは型紙をモチーフの参考としただけでなく、手仕事と機械工業の融合を評価し、型紙を用いた技術を模索したという指摘は大変興味深いものです。マークハムさんはイギリスのジャポニズムの背景、19世紀後期の英国と日本の美意識の比較、リバティのテキスタイルデザインにみる型紙文様の受容例などについて学生にもわかりやすくお話してくださいました。

西洋のデザイン、もの作りに刺激を与えた型紙は、日本では今でも型染めに使われ続けています。多様な型染め技法の中でも手拭いやゆかたを染める「注染ちゅうせん」は、まさに「手仕事と機械工業の融合」が特徴です。私は現在、近代東京の注染ついて、技術革新と、使う人が意匠創案を楽しむ、出版メディアが意匠創出に関与するなど江戸から継承した文化の両面から研究しています。手仕事と機械化の融合は、なぜ、どのように保たれてきたのか、日本のデザインともの作りを再考していきます。

※注染については2008年のリレーエッセイをごらんください。

/news.mgu.ac.jp/essay/460.html