音楽科教授 野沢 真弓

はじめまして、音楽科の野沢真弓です。
 先ず3月11日の東日本大震災で被災された多くの方々に、心よりお見舞い申し上げます。

大学は5月6日から新学期が始まりました。被災した学生も何人もいますが、今まで以上に、熱心に目を輝かせて学んでいます。きっと大震災の体験を通し、今こうして勉強できる環境にいられることを幸せに感じているのだと思います。私もまた無事に新年度を迎えられ、指導できる幸せを感じているところです。

 私は「ピアノ演奏におけるテクニック」「ピアノ指導法」を軸として研究しています。主に「ピアノ実技」を担当し、ほかに1年生を対象に「ピアノ基礎テクニック」、3・4年生に「ピアノ指導法研究」という授業を受け持っています。

 re110610a

皆さんは「大学の音楽科で学ぶ」というと、どんなイメージを持っていらっしゃいますか?
  先生:「そこは強く!」「もっと速く!」「もっと表情豊かに歌って!」
  生徒:「はい」
 こんなレッスンを想像していますか?

 大学でピアノを学ぶということは、どういうことでしょうか?
楽譜をどこまで読み取るか・・・
どんなイメージで演奏したいか・・・
どれだけその曲の時代背景を知るか・・・
どう演奏したいか・・・
どんな音を出したいか・・・
どうすれば人に伝わる音が出せるか・・・
表情豊かに聴こえるようにするにはどう演奏するのか・・・
どうすれば効率よい練習方法があるのか・・・
等々、自分で考えなければならないことが沢山あります。
 ピアノは弾く前に曲を理解し、どう弾くかを考える!そのことが大切なのです。

もっと具体的に、暖かい音を出すにはどう演奏すれば良いのでしょうか?
指先の角度、それぞれの指の押す重さのバランスを変えるだけで違った色合いが出てきますし、また自分の身体を知ることも大切です。
 痩せている人もいれば、私のように太めな方もいて、各々ピアノの1音を出すにもみな音が違う筈です。その音から弱い音・強い音・明るい音・豊かな音を自分で作っていくことも大切な演奏になります。
 力が入ったままでは演奏をコントロールすることが出来ません。先ず脱力からスタートします。
・・・と、こんな風に、皆さんに合った適切な練習方法をアドバイスし、よりよい演奏のお手伝いをするのが私の仕事です。

 

 次に、ピアノに対する私の考え方に影響を与えた人達を紹介します。

01

私は日本の大学を卒業した後、オーストリア・ザルツブルクの音楽大学でProf.Hans Leygraf(ハンス ライグラフ教授)に学びました。今年2月に亡くなりましたが、昨年11月まで90歳を過ぎても現役であり、世界でも著名な素晴らしい先生でした。
 彼の奏法が私の基礎となっています。

 

 

02

私は1974年に留学して以来、35年余り、毎年のようにザルツブルクに先生を訪ね、夏期講習に参加し、また他の多くの先生と友人から学びました。
その中に2度の海外研修でお世話になったピア二スト、ミュンヘン音大のProf.Gerhard Oppitz(ゲルハルト オピッツ教授)がいます。もう知り合って34年になります。

 

ピアノ界ではライグラフ先生もオピッツ先生も、二人とも大変有名ですが、どんなに忙しくても、昔から生活のペースは変わらず、自分に厳しく常に音楽と共にあり、大変知性豊かで、心から尊敬する先生と友人です。

 ノルウェーのProf.Einar Steen-Nøkleberg(アイナー ノックレベルク教授) もライグラフ門下の先輩であり、友人です。

彼らはいずれも宮城学院で演奏会や公開レッスンを行ない、多くの学生に素晴らしい刺激を与え、それを機会に多くの学生が留学し、また研究生として更に勉強を続け、活躍しています。

恩師や素敵な芸術家の仲間に支えられ、今の私があります。
 彼らと同じレールに乗り、一歩でも近づき、なお前進できればと思っています。また、少しでも皆さんの音楽の世界が広がるようお手伝い出来ればと願っています。

03

音楽を目指すには、厳しい練習も必要となり、また時には大きな壁にぶつかることもあるかも知れません。でも、それを乗り越えた先にはきっと素敵な音楽の世界が待ち受けているでしょう。

 音楽は本当に素晴らしく、美しいものです。

 今年もまたオープンキャンパスや音楽科の夏期講習会などがあります。
 近い内に皆様とお目にかかれるのを楽しみにしています。