「卒業生は今」の三回目は、米国で才能ある子供の教育で著名なThe Nueva Schoolで教鞭をとっている佐瀬陽子さんです。
なお、The Nueva Schoolの行動指針は “Learn by doing, learn by caring”です。
(写真:前列の左端が佐瀬さん)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「にせたぬきじる?にせだぬきじる?連濁?連濁が起こることで意味が変わってしまうんだ!」こんなおもしろい議論は、遊佐典昭先生の言語学の授業の一コマ。これが私の日本語教師への道へ進むきっかけとなっています。現在日本語教師としてアメリカにて教鞭をとり、10年ほど経ちます。
現宮城学院の後輩の皆さまにお伝えしたいことは、自分の可能性を過小評価しないことです。自分が叶えたい夢はすぐには叶えられないかもしれないし、そこまでの道のりはそれほど簡単ではないかもしれません。しかし、それに向かって日々努力することは決して無駄なことではありません。まずは自分の目標に向かって、一歩進んでやってみる、その一歩が、二歩三歩となる。それが大切なのではないのでしょうか。しかも一度の失敗で決して諦めず、再度トライすることが大切なことだと私は思うのです。さらに大切なのが、その一度目の失敗の何が要因だったのか、それをなるべく客観的に分析し、その弱さを強さに変えるよう努力する、この過程が成功へと結びつく、と私は信じています。そして、その夢の達成が難しそうな場合、教授、先輩、その分野にいる人にいろいろ聞き、いろいろなところへ行ってみて、他の似たような道があるのかも探求してみることです。その過程の素敵な産物は、そういう困難な道を進み続けた中で得た経験や人との出会いが、自分の可能性の「筋肉」を鍛え上げられるということです。
そんな私自身も自分の可能性を探す道を進んできました。例をあげると、アメリカでの大学院での勉強そして修士号を取得、英語がネイティブのアメリカ人でも何度か不合格するというアメリカ・ワシントン州の教員免許取得試験に一人目の娘を妊娠中に合格できたこと、そして、生徒たちはIQの高いギフテッドを専門とするエリート私立校で、ほとんどの同僚が著名大学(ハーバード大学、スタンフォード大学)での博士号を取得しているという職場環境にて、 現在も教鞭をとれているということです。日本にいる頃には、こんな可能性は考えたことがありませんでした。今でも覚えているのが、ワシントン州での教員免許の英語での数学の勉強、英語での作文を家でこつこつと勉強していたことです。アメリカ人でも不合格のある教員免許試験、あまりにも無謀なことと思い、 つい諦めたいと涙した日々もありました。しかし家族や友人の支え、楽しく日本語を学んでくれるアメリカの高校生にどうしても教えたいという情熱がふつふつと蘇ってきました。合計5時間ほどの試験—私が英語のネイティブであるという前提での容赦ない英語での作文は2種類、妊娠中でお腹が減るので長丁場の試験の休憩時間に食べたおにぎり、暗記しなければいけなかった英語での数学の専門用語、そして、無事に合格。自分が出来ると思えなかったことに挑戦することで、私は可能性という筋肉を鍛えることに成功したのです。今現在も自分の心地が良いと思える能力範囲を少し超えるぐらいの機会をなるべく見つけ、挑戦しています。今年の夏はスタンフォード大学での教師専用のアジア学ワークショップ参加に選ばれ、それへの参加、さらに秋には、地域ボランティア活動として、本職の合間に、放課後、地元小学校にて小学生、しかも女の子だけでのびのびと学べるコンピューター・プログラミングのクラスを指導する予定です。
この自分の可能性に挑戦する力も、宮城学院女子大学で宗教学、英語学、国際関係学、言語学と様々な分野を学べたこと、多様性のある素晴らしい教授たちに恵まれたこと、女子だけという自分自身をゆっくりと見つめることができる環境であったこと、今でも仲が良く支え合える同期の友人たちに巡り逢えたこと、こういったことが土台となり、常に未知の可能性に挑んでいけているのだと思います 。皆さんも自分の計り知れない未知の可能性に是非挑戦して、充実した「宮学」生活を送ってください。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
プロフィール
佐瀬陽子
現職:The Nueva School Upper School Japanese Teacher
宮城県古川女子高等学校卒。1998年、宮城学院女子大学英文科卒業。2002年オハイオ大学 (Ohio University)応用言語学修士課程入学 (全学費免除)、2004年修士号を取得。大学院卒業時に「Outstanding Language Teacher’s Award」受賞。ワシントン州教員免許取得後、現地公立高校にて3年間日本語を教える。レントン学区より「Best Employee of the Year」にノミネートされる。2014年よりギフテット専門の私立校にて教鞭、現在に至る。2018年より、サンカルロス市姉妹都市交流委員会の役員を務める。
*****
*佐瀬さんが参加した今年のスタンフォード大学の教員用のワークショップの様子が以下のサイトからご覧になれます。佐瀬さんが(0;22)あたりに登場します。
Stanford welcomes middle and high school students – and teachers – for summer academic programs