英文学科遊佐典昭教授は、東北大学、京都女子大学との共同研究において、外国語学習における社会性の役割を機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)で調べたところ、言語処理の中枢であるブローカ野の活動に差がでることを特定することに成功しました。
これまでの研究から、母語獲得では、子供にテレビやCDからの音声刺激を与えただけでは不十分で、「他者からの働きかけによる刺激」が必要であることが明らかになっています。また、外国語に関しては、9ヶ月の幼児に対して外国語で直接話しかけたほうが、テレビから話しかけるよりも、外国語の音を区別する能力を向上させることが明らかになっています。しかし、成人が外国語の文法規則を学ぶ際に、社会的相互作用がどのような影響を及ぼすかの研究は、本研究が初めてです。
本研究では、成人日本人聴者が、 (人間言語である)日本手話を外国語として教室で学ぶ際の社会性の果たす役割について実験を行いました。実験参加者は、聾者である教員との相互作用を通して日本手話を学習しているグループ、その学習を撮影したDVDで日本手話を学習したグループです。従って、両グループの相違点は、教員と直接かかわるか否かの「社会性」の有無です。統語構造の文法性判断を調べた行動実験では両グループに有意差が見られませんでした。しかし、fMRIを用いて脳機能測定をした結果、人間を介して日本手話を学んだグループのほうがDVDで日本手話を学習したグループに比べ、ブローカ野の活動がより強いことが明らかになりました。このことは、母語獲得のみならず、大人の外国語学習においても、言語モデルだけでは不十分で、脳の有意な機能変化を伴う学習のためには、社会性が役割を果たしていることが初めて明らかになりました。
今回の研究結果は、デジタル時代における外国語学習の改善や、言語機能の解明につながるものと期待されます。
本研究成果は、スイスのオンライン科学雑誌 Frontiers in Human Neuroscienceで公開されました。論文は、以下のサイトから無料でダウンロードが可能です。
/journal.frontiersin.org/article/10.3389/fnhum.2017.00115/full