2021年度第2回 人文社会科学研究所新所員研究会を開催いたします。
テーマ:ヴァージニア・ウルフの『幕間』とリベラル・イングランドのリーダーシップ不安
報告者:酒井 祐輔助教【英文学科】
日時 2021年8月6日(金)16:20~17:50
場所 宮城学院女子大学人文館5階A549⇒講義館4階C401に変更いたします。
※テーマに興味を持たれた方は、どなたでも参加できます。
参加をご希望の方は、氏名、連絡先(Email アドレス・℡)をご記入の上、
8/4(水)12:00 までに下記Email アドレス にお申し込みください。
人文社会科学研究所Email :jinsha@mgu.ac.jp
※新型コロナ感染状況により、開催形式が変更になりますことをご了承ください。
変更に関しましては、申込時に頂いたご連絡先にご連絡いたします。
※写真をクリックしていただくと拡大いたします。
<要旨>
George Dangerfieldが1935年の著作タイトルに掲げた「リベラル・イング
ランドの奇妙な死」という表現はやや誇張を含んだものであったにしても、大
陸でファシズムが存在感を増しつつあった1930年代、イングランドの知識人
たちの間でリベラリズムが危機を迎えているという認識が広く共有されていた
ことは確かだ。そこからくる不安はしばしば、強力なリーダーシップの不在を
嘆くリーダー待望論という形をとって表明された。
本発表はヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)最後の小説『幕間』
(Between the Acts)をこうした1930年代から第2次世界大戦直前にかけての
リーダーシップにまつわる不安へのひとつの応答として解釈する。本作に登場
する女性芸術家La Trobeについて、批評家の意見は彼女をトランスフォーマ
ティヴなリーダーとして評価するのか独裁者のパロディとして捉えるのかで二
分されてきた。本発表では、こうした解釈の相違は、La Trobeの試みが抱える
内在的矛盾――民主的な演劇を実現するために強権的なリーダーシップに依存
するというパラドクス――に由来するものであると論じる。
強力なリーダーシップの代わりにイギリスの「普通の」人々に希望を託そう
としたウルフではあったが、だからこそ人々が抱える暴力性を直視せざるを得
なくなった。『幕間』はイギリスの民主主義についての意外なまでのオプティ
ミズムと人間の本性に関してのペシミズムか共存する奇妙な著作となっている。