幼児教育専攻では、附属森のこども園と常に連携しながら、授業や実習等を通じて日常的にやり取りを行っています。特に、1年次の専門基礎演習での観察実習(子どもや保育士の行動を観察し、記録する実習)や、学校臨床研究Ⅰ(幼児教育の様々な実践場面をとおして、教育の実際を理解することを目指す授業)などを通じて、学生が現場での学びを深める機会を積極的に設けています。こうした密接な連携の一環として、幼児教育専攻の教員は、附属森のこども園の園だよりに毎月リレー方式でコラム記事を執筆しています。今回は4月号の尾形良子教授のコラムを紹介します。
「その時、どう思ったの?」
20歳代半ばかと思われる、大学生にも見えるような若々しいお母さんが、5歳くらいの男児を連れてベンチに座っていました。結構可愛らしい洋服を着ていて、初々しいお母さんかしらと眺めていたのです。たまたま、私も向かいのベンチに座っていたため会話が聞こえてきました。
「今日は公園で何をしていたの?」「砂で遊んだよ。でもおもちゃを取られた」。
「そう。おもちゃを取られて、どう思った?」「いやだった。でも我慢した」。
「偉いねー。その後、どうしたの?」「砂で恐竜を作った」(続く)。
このお母さんはカウンセリングをしているかのように、「開かれた質問」を繰り出しています。開かれた質問とは、「はい」「いいえ」等一言で返す「閉ざされた質問」ではなく、その場の状況や人との交流、感情などさまざまな情報を引き出すやり取りのことで、「開かれた質問」と言います。下線を引いた箇所です。豊かなコミュニケーションをもたらします。お話が苦手な人ではなく、緊張がとけている場合には、いろいろなお話が出てくる聞き方です。
お母さんの見事な質問と、意外にも結構おしゃべりをしていた男児との会話。子どもさんがお話ししたくなるような、見事な言葉のキャッチボールを見せてもらいました。子どもからお話を引き出したくて一心にやっているのだとしたら、凄腕の聞き手だなぁと感服しておりました。
宮城学院女子大学教育学部 尾形良子