6月29日(金)、江戸時代の絵画作品を直接観察する鑑賞会が行われました。日ごろ、あまり見る機会のない掛け軸の絵を、ガラスケースなしに直接見られるとあって、熱心な学生たちが集まりました。画面の細部に現れた筆の運び、鳥や魚の生き生きとした姿に魅せられていました。
学生たちが見たのは、人間文化学科の井上研一郎 教授が研究を続けている松前藩の家老・蠣崎波響(かきざき・はきょう 1764-1826)の作品です。波響は、藩の家老でありながら、本職の絵師におとらぬ優れた絵画作品を多く残しました。今回は所蔵者のご協力で、5件8点の作品を拝見しました。
生き生きとした鯉の姿、春雨に濡れる桜と雉、案山子の頭に止まる小鳥などの掛け軸を、学生たちは注意深く観察し、正確な寸法を測り、材質や形状を確認して調査用紙に記入していきます。ついでにスマホで撮影も…所蔵者の特別な計らいです。
「祈願描き」といわれる小さな絵もありました。松前藩が福島の梁川に転封されていたときに家老職を務めていた波響が、松前への復領を願って毎朝神社に奉納したものです。可愛らしい雀の絵などもありました。
最後にメモしたデータの照合と確認。絵画作品には、文字や言葉で表せない貴重な情報がたくさん隠されています。それを読み取る力をつけること、言葉にして伝えることが、学芸員の使命のひとつです。この鑑賞会が、その一歩となるといいですね。