大崎農家見学会 活動報告

6月16日(土)、県北部地方振興事務所が主催し、大崎地方の豊かな食材の利活用を促進し、学生の発案によるメニュー開発や加工商品の創出を目指す「おおさき食材の利活用促進に向けた現地調査・見学会」が行われました。災害復興支援活動で行う食育支援のための事前準備とワークショップとあって、食に関する自主活動プロジェクトなど6団体から計22名が参加しました。

 朝8時30分に宮城学院を出発し、うとうとしながらバスに揺られることおよそ1時間半。最初に訪れたのは、大崎市鹿島台のトマト農家「デリシャスファーム」です。こちらの農家は、土づくりのプロ。長年培ってきた経験から得たこだわりの製法で、ぎゅっと味のつまったおいしいトマトを、食卓にお届けしています。

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県北部地方振興事務所の板橋慎幸さんから今日1日の行程などお話いただいた後、「楽食プロジェクト」と「harapecoぱくぱく」の代表者が自分たちの活動や今回の訪問に寄せる期待などをお話し、挨拶しました。

 デリシャストマトとトマトジュースを試食・試飲させていただくと、トマトはなんというか、まったく癖がありません。どちらかというと、野菜というよりフルーツに近い甘さでした。皮が歯でプチッと切れる感覚が、新鮮な証拠です。「なにこれ!甘い!」「こんなおいしいトマトはじめて!」。会場は、感嘆の嵐。ジュースは、砂糖・塩どちらも入っていないとのことですが、とてもフルーティで、トマトしか使用していないのに、ほのかに桃のような風味がありました。トマトに付加価値をつける…。なるほど、この美味しさはリピーターになります。

 デリシャスファーム社長の今野文隆さんによると、「デリシャストマト」は、味は一級品ですが規格外が出やすく、育てるのが大変難しいとのことです。それゆえ、デリシャスファームではトマトをつかった様々な加工食品が売られていました。ジャム、ソース、ジュース、ソフトクリーム、ドライトマト…。デリシャスファームさんのトマトピューレを使ったメニュー開発に意欲を示すプロジェクトもありました。

 ビニールハウスの中も見学させていただくことができました。身がはちきれんばかりに実った、青いトマト。おいしいトマトは、ここで愛情たっぷりに育てられているのですね!

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 次に向かったのは、(株)はなやか が経営している菜園レストラン「野の風」です。水田に囲まれた、緑豊かな土地に位置しています。こちらでは、国際文化学会と戸野塚ゼミの代表者が挨拶しました。

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社長の伊藤恵子さんは専業農家から一念発起し、花野果市場やレストランをオープンさせた、バイタリティにあふれた女性です。病気を経験され、それを乗り越えて起業されたそうです。「私がこの仕事を始めてここまで軌道に乗れたのは、今まで出会ってきた人に恵まれたから」「人との出会いはとても大切」とのお話に感銘を受けました。
昨年の東日本大震災後には、東松島の避難者220人にお弁当を3カ月間届けられたのだそうで、今でもその時の味が忘れられないと伊藤さんを訪ねてこられる方もいらっしゃるそうです。

 いただいた昼食はとてもヘルシーで、ボリュームたっぷり!そして何より、素材が違うのが食べてみてはっきりと分かります。葉物野菜はシャキシャキ、しいたけは肉厚、たまねぎも辛味が少ない!「食を通して農業のおもしろさを伝えたい」という伊藤さんの思いが伝わってくるような優しい「おふくろの味」の郷土料理で、心もお腹も大満足でした。ホテルオークラの料理長も驚いたという「きゅうりの佃煮」は初めてのお味で、皆、感動していましたね。

 伊藤さんに郷土料理を教えてほしい、伊藤さんのお店でお手伝いしたいという声まで、伊藤さんと何かしてみたいと思う学生がたくさんいました。伊藤さんからも「MG生のような若い世代の意見を取り入れてみたい」とのお話をいただいて、MGと伊藤さんがコラボする日もそう遠くないのかも!?

 最後に訪れたのは「ハートフルランド ジャージー牧場」。こちらでは、「ハートフル・スイーツ」と食品栄養学会の代表者が挨拶しました。
ジャージーとは、イギリス領海峡諸島のジャージー島原産の牛のことで、ホルスタインからとれる一般的な牛乳と違い、喉越しさわやかで、クリームのような味わいのおいしい牛乳がとれるのが特徴です。

 およそ20年前はジャージー種自体があまり有名ではなかったため、社長の佐藤秋広さんは会社を設立するのにとても大変な思いをされたそうです。現在でも、ジャージー種を育てている牧場は県内で「ハートフルランド ジャージー牧場」ともう一ヶ所のみだそう。

 ほとんどの学生は、ジャージー牛乳初体験。味は普通の牛乳とははっきり異なります。分かりやすく例えるなら、ほのかに甘いソフトクリームのような味わいでした。牛乳なのに、まるでデザートのよう。低脂肪牛乳ばかり飲みなれている私たち女子大生にとって、つい、驚きの声がもれてしまうほどの美味しさでした。
地元の大崎市の小学校では、年に数回、こちらのアイスクリームやヨーグルトが給食に出るのだそうです。うらやましいですね。

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お店では、ジャージー牛乳を使用したジェラートも販売していました。佐藤さんのお話の後には、レジの前にあっという間に長蛇の列が。筆者は、王道のジャージークリームをチョイス。素材の味が生きていて甘さもちょうどよく、佐藤さんのこれまでのご苦労を伺った後にいただいたお味は、また格別でした。

 ジャージー牛乳を使ったお菓子を作ってみたい、大学でジェラート販売をしてほしいなど、こちらでもさまざまな希望が聞かれました。

 今回の大崎農家見学会は、とても有意義なものとなりました。
現在、わたしたちの住む東北地方では震災以来、農業・漁業者にとっては厳しい状況が続いていますが、農家の方々はとびきりの食材を使って「地元でとれた農産物の美味しさ」を伝えてくださいました。これからの宮城県の農産物の消費を支え、郷土料理を伝承し、更には新たなメニューや加工品を開発していくのも、わたしたちのような若い世代だと思っています。

 地元で取れた野菜を自主活動の中で積極的に取り入れ、地元の農家さんと連携してみませんか? 

 最後になりましたが、デリシャスファームの今野文隆様、はなやかの伊藤恵子様、ハートフルランド ジャージー牧場の佐藤秋広様、貴重なお話を本当にありがとうございました。

MGPRプロジェクト所属 英文科2年 小竹 沙綾