児童教育学科教授 松浦 光和

20090109

 こんにちは、児童教育学科の松浦光和(まつうら みつかず)です。私は心理学の教員で、カウンセリングが専門です。

 さて、それでは本題に入りましょう。写真をご覧ください。写っているのは、児童教育学科の学生達と私(左から4人目)です。みんなの視線が左から二人目の学生に向かっているのが分かりますか?とても自然な視線です。視線の先の学生は、何かを真剣に語り、他の学生は、それを聴いているのです。皆が相談することもなく、こういう状況を作り出したのです。いい感じでしょ?
 ふだんは、もっと大きな輪を作って座りますが、この日は撮影用に小さな輪にしました。視線が、まるで「聴いているよ」と語りかけているようです。ただのおしゃべりでは、視線はこういう風にはなりません。おしゃべりのときの視線は、ある人はお隣に、ある人は窓の方に、ある人は正面にと、バラバラになるものですが、この写真では一人に向かっています。一体、何をしているのでしょう?

 これは宮城学院で行っている「エンカウンター・グループ(Encounter Group)」の一場面です。左から二人目の学生が何かを語り、周りの学生が真剣に聴いているのです。こういうようになることを私が、指示や注文をしたのではありません。指示や注文では、怪しく、どこか作りものの様な雰囲気が漂ってしまうものです。

 エンカウンター・グループというのは、「出会い(Encounter)のグループ(Group)」という意味です。誰と出会うのかというと、まず他者と出会って、次に自分に出会います。自分に出会うというのは、自己の内面を知るということです。
 エンカウンター・グループはアメリカで、第二次世界大戦後にカウンセラーを養成するために始められました。しかし、今はカウンセラーの養成に止まらず、他者と出会い、自己の内面と出会うために行われています。そこで、宮城学院の児童教育学科の「自主ゼミ」(成績評価に無関係のゼミ)では、学生の皆さんが、他者と出会い、自己と出会い、さらにはカウンセリングを学ぶために、エンカウンター・グループを実施しています。1週間に1回、1回は約80分ですが、これを10回ほど行います。

 私たちは、嬉しいとき、悲しいとき、寂しいとき、誰かに話したくなります。たった1人でもいいから、真剣に話を聴いてくれたら、どんなに有り難いことでしょう。でも、実際には皆忙しくて難しいですよね。そんな人も、エンカウンター・グループで色々と試行錯誤したあとで、真剣に聴き合えることがあります。聴かれて自己に出会い、聴いて他者に出会います。その仕組みは、入学後にお伝えします。
 話される内容は、難しいことではなく、秘密でもなく、日常のちょっとした出来事です。私自身、最初は「若い人たちは、話したり聴いたりすることが苦手な人が多いのかな?」とか「ひとり静かにゲームをしたり、黙々とケータイに向かうのが普通なのかな?」と思ってエンカウンター・グループを始めましたが、実は、人と話すことが大好きという人が多くいることが分かりました。

 さて、以上がエンカウンター・グループの簡単な説明です。なんだか新しい事を学べるような気がしませんか?もし少しでも興味が出てきたら、児童教育学科で是非ともエンカウンター・グループに参加してみてください。そして、聴くことの楽しさ、聴いてもらうことの嬉しさを経験してください。
 エンカウンター・グループで皆さんと出会えることを楽しみにしています。