教員のリレーエッセイ:英文学科 助教 酒井 祐輔

 私の名前は酒井祐輔。専門はイギリス文学です。英語で書かれた本を読むのが仕事の一部(大半!?)なので、一年じゅう毎日辞書を引いています。私のような職業の人間にとって一番頼りになるのはOxford English Dictionary(通称OED)、イギリスのオックスフォード大学出版局が発行している最大・最強の英語辞典です。
 昔は計20冊にもなる紙の辞書だったのですが、ある時CD-ROMになり、現在はオンライン化されて、サブスクライブ契約さえすればWiFiのあるところ、いつでもどこでも使えるようになりました。
 オンラインのいいところは「いつでも、どこでも」だけではありません。紙の場合、一度印刷すると訂正・加筆ができませんが、ウェブ上のデータであれば簡単です。電子化されて以降のOEDは年4回の定期アップデートが加えられ、その都度新しい言葉が加えられていたのですが、今年に入ってその真価が発揮される出来事がありました。
 OED編集チームの学者たちは、コロナウイルスの流行に伴って現れた新しい言葉、新しい用法をリサーチし、次々と辞典に追加していったのです。例えば「遠い」という意味をあらわすremoteのページには、アフリカ、ザンビアで銀行のCEOを務めている女性実業家、ミジンガ・メルの5月24日のツイートが用例として追加されました。「効果的なリモート・ワークがこれからの当たり前になるだろう “Effective remote working will become a new normal”」というものです。
 今回の緊急アップデートを見ると、グローバル化した世界において、英語が様々な国や地域の人々によって話されているという事実を改めて実感します。辞書や書物というと日常からはかけ離れた(リモート)な営みのように感じられがちですが、書物(電子書籍も含む)を使うことで世界の動きが体感できるということだってあるのです。


普段の作業風景、
右側の画面がOED


英文学科の図書室には
紙版のOEDもあります


紙版のOEDを手で持つと
こんな感じ、重い!