教員のリレーエッセイ:人間文化学科 教授 内山 淳一

みなさん、こんにちは。人間文化学科の内山です。この3月まで仙台市博物館に33年間勤めました。最後は館長として職務を終えましたが、学芸員としての活動が大半を占め、多くの展覧会に関わってきました。江戸時代の絵画史、とくに西洋からの影響を受けつつ独自の展開をみせた「洋風画」を専門としています。
ところで、皆さんは博物館や美術館に行ったことがありますか。「絵の見方がわからない」「美術館や博物館は敷居が高くて…」といった話をよく耳にします。高校までの美術教育はどちらかと言えば実技中心で、鑑賞するノウハウを十分に伝えてこなかったことも大きく影響しているように感じます。

博物館スタッフも、ただ手をこまねいていたわけではなく、さまざまな試みをしてきました。その一環として実現したのが「いつだって猫展」です。担当学芸員が実は本学の卒業生でもあった縁で、先日この展覧会の紹介をかねたシンポジウムが学内で開催されました。私もパネリストとして参加させてもらったのですが、お釈迦様の亡くなる場面を描いた「涅槃図」に猫がいないのは本当か、その理由は何か、といったなぞ解きから、化け猫や猫神様と養蚕との関係、さらには江戸の藩邸で飼われていた猫の供養碑の話まで話題満載で、猫文化の奥深さに驚かされたひと時でした。

近年、伊藤若冲や葛飾北斎らの作品が「クールジャパン」の象徴的なイメージとして、また日本のアニメ文化の源流としてマスメディアに取り上げられる機会が増えてきました。喜ばしいことなのですが、日本美術を楽しむためには実はちょっとしたコツが必要なのです。ゼミでは、個々の作品が発信するメッセージを読み解くための技術とともに、その魅力をわかりやすく伝える方法も学んでいきます。誰にでも備わった美を感じ取る能力を伸ばすことが、人生にこの上なく豊かな彩りを与えてくれるに違いない、と信じています。