3月28日(木)、宮城県亘理町の郷土資料館で、東日本大震災の津波によって被災した美術作品の調査が行われ、人間文化学科の日本美術史ゼミがこれに協力しました。
当日は同学科の井上研一郎教授のほか、院生1名、学部3年生2名が参加して、被災作品の同定、破損状態の確認と修復の展望、材質・寸法などのデータ確認などを行いました。
震災から2年が過ぎた今も、被災地の復興はまだまだ進んでいません。とくに被災した文化財の修復や復元は、道路や施設、住宅などに比べても大幅に遅れており、個人所有の資料や作品については全く手つかずと言ってよい状態です。
震災直後から各地で資料レスキュー活動を展開してきた宮城歴史資料保全ネットワーク(宮城資料ネット)は、亘理町教育委員会の要請に応えて同町E家が所蔵する作品・資料の調査を始めています。今回の美術作品調査はその一環として行われました。
作品の状態は、被災直後の適切な応急処理のおかげでカビなどもなくおおむね良好で、修復すれば鑑賞に堪えうる作品も少なくありませんでした。コレクション全体としては、夏目漱石や尾崎紅葉関係の作品が多く、当主の個性がよく表れた良質のコレクションということができます。
予定した作業時間の最後に、人間文化学科の井上研一郎教授が、レスキュー直後の応急処置に携わった作業員の方々に向かって説明を行いました。応急処置の際に採られた寸法などのデータがしっかり記録されていて大いに役立ったこと、作品の中には優れた絵画や当主の趣味を反映した作品などもあり、亘理町の歴史を物語るうえで欠かせない貴重な資料であることなどが説明されました。
人間文化学科の日本美術史ゼミでは、今後も宮城資料ネットの活動に協力していく予定です。